ハウジングサービスとは
ハウジングサービスとは、ハウジング事業者が保有するデータセンター内でサーバの設置場所を企業に貸し出すサービスです。データセンターをもつ事業者が顧客に提供するサービスの一形態を意味し、コロケーションと呼ばれる場合もあります。サーバを預けた企業は、基本的に自社内から遠隔で運用管理を行います。

ハウジングサービス提供事業者は、電源、空調施設、セキュリティなどを確保したサーバルームやラックなどを提供します。こうしたサービスの利用料金に加え、回線利用料金などを月額で支払うのが、一般的なハウジングサービスの料金体系です。
ハウジングサービスの提供内容
ハウジング提供事業者の業務内容としては、顧客企業が持ち込んだサーバを地震や自然災害から24時間守ることが第一に求められます。具体的なサービスの特徴は以下の3つです。
- ●安定性の高い電力供給
- ●プロによる監視サービス
- ●ニーズに応じたサービス展開
それぞれの特徴について詳しく解説します。
安定性の高い電力供給
自社によるサーバ管理では、都市型停電に対応不可な場合があります。しかしハウジングサービスでは、停電などでサーバが停止しないよう、常に自家発電による非常用電源も備えており、安定した電力供給が可能です。また電源回りもサーバを守る専用の機器を使用しているため、落雷などによる故障も回避できるでしょう。
プロによる監視サービス
ハウジングサービスではサーバ内のデータには一切タッチしないことが基本です。しかし最近ではサーバ監視のアウトソースやバックアップ、復旧支援などの運用管理に関するサービスを提供する場合もあります。保守専門のエンジニアにかかる人件費を削減でき、プロによる監視サービスで安心して運用を任せられるためです。具体的には、サーバ室の温度管理、ネットワーク回線の保守管理、サーバに搭載された機器の目視確認などの業務を24時間交代制で行っています。
ニーズに応じたサービス展開
さらに、サーバやストレージなどの機器を借りられるサービスなど、ニーズに応じた多様な運用サービスが展開されています。そのためサービス選定時には、自社がどこまでサービスを必要とするのかをよく擦り合わせすることが大切です。
ハウジングサービスを利用するメリット
自社内でサーバを管理していた企業がなぜ、ハウジングサービスを利用するのでしょうか。ハウジングサービスを利用するメリットは以下の3つです。
- ●災害対策・BCP対策になる
- ●セキュリティ対策を強化できる
- ●社内スペースの有効活用やファシリティに関するコスト軽減
それぞれのメリットについて詳しく解説します。
災害対策・BCP対策になる
多くのハウジング事業者は、その立地も含めて大規模地震等の被害を想定したうえで、免震設計の建物を用意しています。また、地震などの大規模災害には停電などのリスクも考えられるため、自家発電の設備をもつなど非常用電源も備えています。
特に東日本大震災以降、多くの企業で災害対策の重要性を見直すとともに、BCP(Business continuity planning:事業継続計画)対策をしています。これらの対策の一つとして、ハウジングサービスの利用が有力な選択肢とされてます。なお、BCPについては以下の記事で詳しく解説してます。
セキュリティ対策
昨今、ネットワークを経由した不正アクセス事件に注目が集まっていることから、多くの企業ではセキュリティ対策の強化が進められています。なかでも、物理的なセキュリティ対策は重要です。具体的な施策として、認証を強化したサーバルーム等の設置や警備の強化といった取り組みが社内で検討されますが、これらの取り組みにはコストがかかります。
ハウジングサービスなら、厳重な警備や入退室管理、画像による監視など、24時間365日体制でセキュリティサービスが対応しているケースが多く、セキュリティ対策の強化を考える企業に適しているといえます。
社内スペースの有効活用やファシリティに関するコスト軽減
サーバを社内に設置するとなると、専用のラックや電源、冷却設備などが欠かせません。さらに、セキュリティを考えると専用のサーバ室も必要なため、物理的に現在のオフィスでその備品購入やスペースを割くのは難しいという場合にも、ハウジングサービスならばそのまま預けられるので一挙解決です。
ハウジングサービスとホスティングサービスの違い
ハウジングサービスとホスティングサービスは、いずれもデータセンターを活用したサーバ運用手段ですが、その違いは「サーバの所有者」や「運用の自由度」にあります。ここではホスティングサービスの基本を押さえたうえで、両者の具体的な違いについて整理します。
ホスティングサービスとは
ホスティングサービスとは、サービス提供事業者が保有・管理するサーバやネットワーク設備を、月額または年額でレンタルし、ユーザーが利用するサービスです。自社で機器を購入・設置する必要がなく、Webサイトやメールサーバなどの運用に適しています。サーバ管理は原則として事業者が担うため、ITリソースが限られる企業でも導入しやすい点が特長です。
サーバ所有と運用体制における違い
ハウジングサービスは、自社で保有するサーバをデータセンターに設置し、運用・管理も基本的に自社で行います。構成や運用方針を自社でコントロールできるため、独自システムや高度な要件に対応しやすいのが特徴です。対してホスティングサービスは、事業者の保有するサーバを利用し、運用・保守も委託できるため、導入・管理の手間を最小限に抑えることが可能です。
カスタマイズ性と構成自由度における違い
ハウジングサービスでは、自社のサーバ機器を利用するため、OSやソフトウェアの選定、ネットワーク構成、セキュリティ設定などの自由度が高く、細かなカスタマイズが可能です。これに対しホスティングサービスは、あらかじめ設定された環境が提供されるため、構成の自由度は限定的です。システム要件が明確な場合や柔軟な設計が求められるケースでは、ハウジングの方が適しています。
ハウジングサービスの選定ポイント
ハウジングサービスを導入する際は、セセキュリティ対策や運用支援体制、災害や緊急事態への備えについて確認しておきましょう。以下に、それぞれの観点について詳しく解説します。
物理・人的セキュリティ対策が十分か
ハウジングサービスでは、サーバを外部のデータセンターに預けるため、物理的・人的セキュリティのレベルが非常に重要です。たとえば、24時間365日の有人監視体制が整備されているか、入退室管理が生体認証やICカードで行われているかなどを確認しましょう。また、監視カメラの設置範囲や録画保存期間、防犯フェンスの有無なども比較ポイントとなります。データ漏えいや機器盗難を防ぐため、施設全体のセキュリティポリシーを事前に把握することが不可欠です。
運用支援が充実しているか
ハウジングサービスは基本的に自社運用が前提ですが、提供事業者によってはサーバの監視、障害対応、設置作業代行など、運用をサポートするオプションが用意されています。自社のIT体制に応じて、どこまで外部に委ねられるか、サービスの柔軟性と範囲を確認しておくことが重要です。
緊急事態発生時の対策は十分か
緊急事態として災害・火事・停電への対策が十分かを確認しましょう。具体的には以下のポイントを確認するとよいでしょう。
- ■データセンターの立地が地震や津波・洪水の影響を受けない場所か
- 周辺のハザードマップを確認
- ■地震や火災に備えた建築構造か
- 免震・耐震構造、耐火構造基準を確認
- ■地震や火災、停電に備えた防災設備があるか
- 火災報知器などの防火設備、非常電源設備を確認
- ■必要時に駆けつけやすい場所にあるか
- 自社からの距離やアクセス方法を確認
ハウジングサービスの基本を理解して活用を検討しよう
ハウジングサービスの基本と選定ポイントについて解説しました。事業者により建物構造や警備体制など、セキュリティサービスの内容は異なります。最適なハウジングサービスを選ぶため、複数社分の情報を調べて比較するのは時間も労力もかかります。提供事業者にとってセキュリティに関する情報はセールスポイントであるため、資料請求をしサービス資料で確認するのが手っ取り早い方法でしょう。