オンライン診療システムとは
オンライン診療システムとは、インターネットを通じて医師と患者が遠隔で診察や相談を行える仕組みです。パソコンやスマートフォンを用いてビデオ通話やチャットで診療を受けられるため、通院が難しい人でも医療サービスを利用できます。
仕組みと利用の流れ
オンライン診療は、まず患者が専用アプリやWebシステムから診療予約を行うことから始まります。予約時間になるとビデオ通話を通じて医師とつながり、対面診療と同様に症状の確認や診察が行われます。診療後は電子処方箋の発行や薬局との連携により、薬を自宅に配送してもらうことも可能です。支払いもオンライン決済で完結できるため、受診から薬の受け取りまでを非対面でスムーズに進められます。
オンライン診療の普及率
厚生労働省の調査によると、2023年3月時点でオンライン診療を導入している医療機関は全体の約16%と、年々増加しています。新型感染症の流行を契機に利用は急速に拡大し、特に都市部や慢性疾患の定期診察において活用が広がっています。今後は制度面の整備や患者側の利便性向上に伴い、地方や高齢者層にも普及が進むと考えられます。診療の効率化とアクセス改善の両面から、医療体制の重要な選択肢となりつつあります。
参考:令和5年1月~3月の電話診療・オンライン診療の実績の検証の結果|厚生労働省
オンライン診療システムの導入メリット
オンライン診療システムには、患者と医療機関の双方に多くのメリットがあります。通院の負担軽減や業務効率化に加え、新しい診療形態を実現する点でも注目されています。ここでは主なメリットを解説します。
患者側の利便性向上
患者は自宅や職場から診療を受けられるため、通院にかかる移動時間や待ち時間を大幅に削減します。特に、地方に住む人や持病で定期的に受診が必要な人にとって利便性が高い仕組みです。また、育児や介護で外出が難しい状況でも受診できるため、医療へのアクセスが広がります。オンライン決済や薬の配送サービスと組み合わせることで、診察から薬の受け取りまでを非対面で完結。患者側の日常生活への負担が軽減します。
医療機関側の業務効率化
オンライン診療を導入することで、医療機関は診療予約やカルテ管理をシステム上で一元化できます。受付業務や会計業務の負担が減り、限られた人員でも効率的に運営可能です。また、診療記録がデータ化されるため、過去の診療内容や検査結果を容易に参照でき、診療の質向上にもつながります。院内の混雑緩和や感染症リスクの低減、持続可能な医療体制の構築に寄与します。
新しい診療機会の創出
オンライン診療は、従来では実現が難しかった診療機会を広げる可能性をもっています。例えば、過疎地や離島に住む患者でも、専門医とオンラインでつながることで高度な医療を受けられます。また、就業時間内に通院が難しいビジネスパーソンにとっても、柔軟な時間に受診できる点が魅力です。さらに、健康相談や予防医療といった分野でも活用が広がり、病気の早期発見や生活習慣改善の支援につながります。医療サービスの多様化を促進する仕組みといえるでしょう。
オンライン診療システムの導入デメリット
一方で、オンライン診療システムには課題も存在します。診察の精度や情報管理の面で注意が必要であり、導入にあたってはリスクへの理解と対策が欠かせません。以下では主なデメリットを整理します。
対面と比べて診断に限界がある
オンライン診療は映像や音声を通じたやり取りに限られるため、対面診療のように触診や検査を行えません。軽度の症状や定期的な経過観察には有効ですが、詳細な診断や緊急性の高い症状には不向きです。そのため、オンライン診療のみで完結せず、必要に応じて対面診療と組み合わせることが前提となります。診断精度の限界を理解したうえで、どの範囲までオンライン診療を活用するかを判断することが重要です。
セキュリティや情報漏えいのリスクがある
オンライン診療は患者の個人情報や診療データを扱うため、システムのセキュリティが不十分であれば情報漏えいの恐れがあります。特に、通信の暗号化やアクセス権限の管理を徹底しなければ、第三者による不正アクセスのリスクが高まります。また、患者が公共のWi-Fiを利用する場合も安全性に注意が必要です。医療機関は法令やガイドラインを遵守し、セキュリティ対策を強化することで、患者が安心して利用できる環境を整えることが求められます。
オンライン診療システムの選び方・比較ポイント
オンライン診療システムを導入する際は、機能やコストだけでなく、自院の目的や患者層にあっているかを見極めることが重要です。ここでは比較検討の際に注目すべき主なポイントを紹介します。
目的とシステムの相性
まず導入の目的を明確にし、目的にあったシステムを選ぶことが大切です。例えば、慢性疾患の定期診察を効率化したいのか、新規患者へのアクセスを広げたいのかによって必要な機能は変わります。予約管理やカルテ共有に重点を置くのか、決済機能や薬局連携を重視するのかを整理することで、システム選定の基準が明確になります。
目的と機能の相性を確認することで、導入後の運用トラブルも減らせます。以下はオンライン診療システムの主な機能です。システムを検討する際の参考にしてください。
- ■基本機能
- 予約管理・ビデオ通話・決済などの、オンライン診療に必要な主要機能。まずはオンライン診療を始めてみたいという医療機関向け。
- ■レセコンとの連携
- 既存のレセコンに自動連携することで、二重入力を防ぎ、業務効率や医療記録の正確性を高められる。日常診療を効率化したい医療機関向け。
- ■薬局連携・服薬指導支援
- 処方箋を薬局に自動送信し、薬の準備や服薬指導までを一貫して行える。診療から処方・服薬指導まで一貫したケアを提供したい医療機関向け。
- ■リマインドや分析機能
- 再診リマインドで受診率を高めたり、診療データを分析して経営や診療改善に役立てられる。患者の継続受診や経営改善を重視する医療機関向け。
患者層や利用デバイスとの相性
想定される患者層にあわせたシステム選びも欠かせません。高齢者が多い地域では操作が簡単でサポートが充実しているサービスが望まれます。一方、若年層やビジネスパーソンが中心なら、スマートフォンから直感的に使えるアプリ型が適しています。また、パソコンやタブレットなど複数のデバイスに対応しているかも重要です。利用環境にあわないシステムでは定着しにくいため、患者側の使いやすさを意識することが必要です。
セキュリティと法令準拠
医療データを扱うシステムには、高度なセキュリティ対策と法令への準拠が求められます。通信の暗号化やアクセス権限の管理が徹底されているかを確認しましょう。特に厚生労働省のガイドラインに準拠しているシステムは信頼性が高いといえます。また、個人情報保護法や医師法など関連法規に対応しているかも導入前に必ずチェックすべきポイントです。安心して利用できる環境を整えることが、患者との信頼関係を築く基盤になります。
費用と料金体系
システムの導入費用や利用料金は、医療機関にとって大きな判断材料です。初期費用がかかるのか、月額制なのか、利用件数に応じて課金されるのかといった料金体系を確認する必要があります。また、オプション機能やサポートに追加費用が発生する場合もあるため、総合的に見てコストに見合うかを検討しましょう。長期的な運用を考えると、料金の透明性や将来的な費用増加の可能性も確認しておくことが安心につながります。
サポート体制や導入実績
オンライン診療システムは医療現場で日常的に利用されるため、導入後のサポート体制が充実しているかは重要なポイントです。トラブル時に迅速に対応できる窓口があるか、操作マニュアルや研修支援が整っているかを確認しましょう。また、導入実績が豊富なサービスはノウハウが蓄積されており、安心して利用できます。他院の事例を参考にすることで、自院に適した運用イメージをもちやすくなります。
オンライン診療に対応した電子カルテ比較
オンライン診療に対応した電子カルテは、診療記録の管理だけでなく、予約や会計、遠隔診療のやり取りまで一括で行える点が特徴です。ここでは代表的な製品とそれぞれの特徴を紹介します。
CLINICSカルテ
- 経営分析機能でクリニック経営をアップデート
- 一貫性のあるシステムで業務効率を向上
- クラウドシステムによる運用負担の軽減
株式会社メドレーが提供する「CLINICSカルテ」は、予約・問診・レセプト・経営分析機能が一体化されたクラウド型電子カルテです。直感的に操作できるUIと、オンライン診療に必要なフローを統合しているのが特徴で、サポートの手厚さも好評です。診療業務を効率化しつつ、患者の利便性向上を目指す医療機関に適しています。
CLIUS (クリアス)
- 【無料】WEB予約・問診・在宅・オンライン診療全て追加料金なし
- カルテ入力時間を短縮できるUI・UX。初心者でも使いやすい
- iPadでも使える!訪問診療や院内での持ち運びに役立ちます
株式会社DONUTSが提供する「CLIUS(クリアス)」は、「クラウドORCA」との連携により、カルテ入力から会計までを同一画面上で完結できるクラウド型電子カルテです。AIによるオーダー自動学習や推薦機能により、医師の入力作業を大幅に省力化します。Windows・Mac・iPadなど多様な端末に対応し、外来・在宅・オンライン診療の幅広いスタイルに活用できます。
エムスリーデジカル
- 初期0円、AIによる自動学習で入力時間80%削減!
- 15年利用で約1,000万円のコスト削減が可能!
- 金融機関・政府機関も利用する安全技術
エムスリーデジカル株式会社が提供する「エムスリーデジカル」は、AIによる自動学習機能でカルテ入力の時間を約80%削減できるクラウド型電子カルテです。iPadやスマートフォンからでもアクセスでき、検査結果や医療機器との連携も充実しています。導入後の専門スタッフによる充実したサポート体制も魅力です。また、導入者からは、オンライン診療に必要な機能が安価で使用できるという声もあります。
オンライン診療に特化したシステム
電子カルテ型ではなく、オンライン診療がメインの医療機関でも使いやすい専用システムも存在します。診療予約からビデオ通話、決済までをスムーズにつなげられるため、導入しやすいのが魅力です。ここでは、おすすめのオンライン診療に特化したシステムを紹介します。
YaDoc
株式会社インテグリティ・ヘルスケアが提供する「YaDoc」は、かかりつけ医の患者離れ防止に役立つオンライン診療システムです。主要12社の電子カルテと同じPCで利用できるため、複数のPCを用意する必要もありません。問診カスタマイズやデータの可視化により、医師と患者の関係性を深められるため、地域医療を重視する医療機関に適しています。
curon
株式会社MICINが提供する「curon」は、予約、問診、ビデオ通話診療、決済、処方までをアプリ上で完結できるオンライン診療システムです。初期費用・月額利用料が無料で、6,000件以上の医療機関に導入されており、バイタル連携やチャット相談などの機能も充実。多様な診療スタイルに柔軟に対応できる点が魅力です。
ポケットドクター
MRT株式会社が提供する「ポケットドクター」は、スマートフォンアプリを活用し、予約から診療、決済、処方・薬の配送までを一元管理できるオンライン診療システムです。赤ペンや指さし機能により視覚的なコミュニケーションが強化され、遠隔でも対面診療に近い体験を提供できます。患者との対話を重視した診療スタイルに適しています。
オンライン診療システムの費用相場
オンライン診療システムの費用は、初期費用・月額費用のほか、診療ごとの従量課金やオプション費用などの複数の要素で構成されています。クリニックの規模や導入形態によって金額に幅があり、必要な機能に応じてコストが変動します。詳細な費用は各サービスに問い合わせましょう。
- ●初期費用:無料~20万円程度(クラウド型の場合)
- ●月額費用:無料~5万円程度
- ●従量課金:数百円~1,000円程度(決済手数料込の場合も)
【FAQ】オンライン診療システムに関してよくある質問
オンライン診療システムの導入を検討する際には、費用や運用方法、患者対応などについて疑問が生じやすくなります。ここでは、医療機関から寄せられる代表的な質問を取りあげ、分かりやすく回答します。
- ■Q1:オンライン診療システムの費用相場を教えてください。
- クラウド型のオンライン診療システムであれば、初期費用は無料~20万円程度が一般的です。オンプレミス型の場合やカスタマイズを行う場合は数十万円になるケースもあります。月額料金は無料~5万円程度が相場で、そのほかに決済手数料がかかる場合もあります。
- ■Q2:オンライン診療システムは保険診療・自費診療どちらでも利用できますか?
- はい、どちらでも利用可能です。ただし、それぞれ以下のような注意点があります。
- ●保険診療:条件を満たせば算定可能。厚生労働省のルールやガイドラインに準拠
- ●自費診療:自由度が高く、オンライン診療システムを幅広く活用できる。
- ■Q3:高齢患者へのサポートはどのようにすべきでしょうか?
- システム側のサポート機能では、簡易的なUIや大きなボタン表示、電話予約との併用などの工夫があります。また、医療機関側でできる支援としては、操作説明資料の配布や家族・ケアマネジャーの同席対応などが挙げられます。
- ■Q4:オンライン診療システムの申し込みから導入までは、どれくらいかかりますか?
- 初期設定やオンライン診療開始は2週間以内で完了するケースが一般的です。安定的な運用や保険診療対応の申請なども含めると、約1か月ほどかかる傾向にあります。
まとめ
オンライン診療システムは、患者の利便性向上や医療機関の業務効率化に役立ち、医療機関を支援します。導入を検討する際には、目的や患者層にあったシステムを選び、費用やサポート体制を総合的に比較することが重要です。特に、開業時や電子カルテのリプレイスのタイミングには、オンライン診療に対応した電子カルテを選ぶとシステム連携の手間なく導入ができます。
今後、制度面の整備や利用者ニーズの拡大により、オンライン診療は医療体制の大きな選択肢としてさらに普及していくでしょう。この記事でオンライン診療システムに興味をもった方は、ぜひ資料請求でもらえる製品の比較表も参考にしてください。