インバウンド支援ツールとは
インバウンド支援ツールとは、訪日外国人旅行者（インバウンド）を対象に、企業・店舗・自治体などがスムーズな接客や集客を実現するために活用するITツール・サービスの総称です。言語の壁を超えた接客や、文化・決済習慣の違いへの対応を支援し、顧客満足度の向上と業務効率化を両立させる手段として注目されています。
インバウンド支援ツールでできること
インバウンド支援ツールには、多様な機能を備えた製品が存在しています。まずは、どのような機能があるのかを把握しましょう。ここでは、代表的な機能を紹介します。
多言語チャット・音声翻訳
チャットボットや音声認識機能を活用して、異なる言語間の対話を可能にする機能です。来訪者とスタッフ間の会話をリアルタイムで翻訳・表示する仕組みが一般的。テキスト形式・音声形式の両方に対応しているものもあります。
多言語Web・予約受付対応
Webサイトや予約システムのコンテンツを複数の言語に対応させる機能です。外国語でのページ表示や入力画面、予約完了までのプロセス全体を母国語で利用できるよう設計されており、Web集客や事前受付に活用されます。
口コミ・SNS対応
WeChat、Google Maps、TripAdvisorなどの口コミ・SNSプラットフォーム上で情報発信を行う機能です。外国語での店舗情報登録、レビュー収集、投稿管理などが含まれ、複数のメディアへの同時発信に対応したサービスも存在します。
デジタルサイネージ・多言語POP表示
案内用のサイネージや商品POPを多言語で表示するための機能です。表示する言語はユーザーが選択できる形式が多く、静的な内容に加えて、動画や音声案内に対応した機種もあります。設置場所に応じたカスタマイズ性も重要です。
海外キャッシュレス・決済対応
Alipay、WeChat Pay、銀聯カードなど、外国人観光客が利用するキャッシュレス決済手段に対応する機能です。国内の決済端末やシステムと連携し、円以外の通貨でも取引が可能になるよう設計されています。レジやセルフ端末などと接続して利用されます。
インバウンド支援ツールの導入メリット
インバウンド支援ツールを導入することで、以下のようなメリットが期待できます。
- ■接客の品質向上
- 自動翻訳や多言語表示により、言葉の壁を感じさせない丁寧な対応が可能になります。
- ■集客強化
- 訪日外国人に人気のSNSや口コミサイトでの情報発信を強化し、来訪のきっかけを創出できます。
- ■業務効率化
- チャットボットや予約システムによる自動対応で、スタッフの業務負担を軽減します。
- ■売上増加
- 多様な決済手段への対応や高評価レビューによって、購買意欲やリピート率の向上につながります。
インバウンド支援ツールの選び方
インバウンド支援ツールは、業種・業務内容・施設規模などに応じて必要な機能や導入形態が大きく異なります。以下の３つのポイントを参考に、自社に適した製品を選定しましょう。
自社の業種や施設規模にあっているか
小売・飲食・観光・宿泊など、業種によって求められる機能はさまざまです。例えば、観光施設や商業施設では多言語案内が可能なサイネージの導入が有効です。ホテルや旅館では、チェックイン対応を自動化できるチャットボットが適しています。施設の規模やスタッフ体制、来訪者数なども考慮し、自社に最適なツールを選びましょう。
対応言語数が多く、精度が高いか
訪日外国人観光客の多くは、英語・中国語・韓国語・タイ語などを利用しています。ツールを選ぶ際は、こうした主要言語に対応しているかに加え、翻訳の精度や自然さも確認すべき重要なポイントです。自社の想定するターゲット国・地域にあわせて、実用性の高い言語ラインナップを持つ製品を選定しましょう。
国や自治体の補助金が適用するか
インバウンド支援ツールの導入に際しては、国や自治体による補助金制度を活用できる場合があります。多言語対応やICTツールの導入、施設環境の整備などが補助対象となるケースも多く、費用面の負担を軽減する手段として有効です。制度ごとに支援内容や申請条件、期間が異なるため、事前に詳細を確認しておきましょう。
インバウンド支援補助金一覧（2025年版）
ここでは、インバウンド対応施策に活用できる代表的な補助金制度を紹介します。
- ■観光庁「令和６年度補正予算事業「地方誘客促進に向けたインバウンド安全・安心対策推進事業」
- 訪日外国人が安心して旅行できる環境整備を目的に、災害時の対応強化や施設の多言語化などを支援する制度です。観光施設・自治体・民間事業者などが対象となります。
参考：令和６年度補正予算事業「地方誘客促進に向けたインバウンド安全・安心対策推進事業」の公募を開始します｜観光庁 - ■中小企業庁「事業再構築補助金」
- 中小企業の業態転換や新分野進出を支援する大型補助金です。インバウンド対応を取り入れた新規事業や、施設の外国語対応強化なども対象に含まれます。
参考：事業再構築補助金｜中小企業庁 - ■公益財団法人 東京観光財団「インバウンド対応力強化支援事業補助金」
- 東京都内の観光関連事業者を対象に、多言語対応・ICT導入・施設改修などを支援する補助金制度です。インバウンド対応の底上げを図る事業に活用できます。
参考：インバウンド対応力強化支援事業補助金｜公益財団法人 東京観光財団
なお、都道府県や市区町村によっては、これらとは別に独自の補助制度を設けている場合もあります。最新情報は各自治体の公式Webサイトをご確認ください。
おすすめのインバウンド支援ツール
ここからは、注目のインバウンド支援ツールを紹介します。自社のニーズにあったツールを選ぶために、ぜひ製品を比較してみましょう。
inbound insight
株式会社ナイトレイが提供する「inbound insight」は、訪日外国人の行動データやSNS投稿をリアルタイムで解析するインバウンド対策支援サービスです。国籍別の滞在傾向や周遊ルートを可視化します。NTTドコモのモバイル空間統計やナビタイムのGPSデータと連携し、訪日外国人の動向を詳細に把握可能。観光地や商業施設の集客戦略やプロモーション施策の最適化を支援します。
payke
株式会社Paykeが提供する「payke」は、商品パッケージのバーコードをスマートフォンでスキャンするだけで、商品の詳細情報を多言語で表示するアプリです。訪日外国人観光客が日本の商品情報を簡単に理解できるよう支援し、購買意欲の向上に貢献します。特に医薬品や化粧品などの商品での利用が多く、小売店やドラッグストアでのインバウンド対応に最適です。
talkappi
株式会社アクティバリューズが提供する「talkappi」は、ホテル・旅館向けの多言語対応AIチャットボットです。宿泊施設の公式サイトやLINEと連携し、予約や問い合わせ対応を自動化します。自動応答率は96%以上で、スタッフの業務負担を軽減しながら、外国人ゲストへのスムーズな対応を実現。導入により、直販率の向上や顧客満足度の向上が期待できます。
UDトーク
RoiS株式会社が提供する「UDトーク」は、音声認識と自動翻訳を活用したコミュニケーション支援アプリです。会話をリアルタイムで文字化・翻訳し、視覚的に表示することで、聴覚障害者や外国人との円滑なコミュニケーションを支援します。イベントや会議、観光案内所など、さまざまなシーンでの活用が可能です。
Safety tips
アールシーソリューション株式会社が提供する「Safety tips」は、観光庁監修のもと開発された訪日外国人向けの災害情報通知アプリです。緊急地震速報や気象警報、避難情報などを15言語でプッシュ通知し、外国人旅行者の安全確保をサポートします。さらに、医療機関情報や交通機関情報も提供し、災害時の対応を多角的に支援します。
まとめ
インバウンド支援ツールは、多言語対応・予約受付・口コミ発信・決済手段の多様化など、訪日外国人との接点をスムーズにし、集客・売上・満足度の向上につながる有力な手段です。さらに、補助金を活用することで初期コストを抑えた導入も可能です。自社に必要な機能を見極め、最適なツール選びを進めましょう。まずは情報収集からスタートしてみてください。
