TPiCS-Xの導入事例【アサゴエ工業株式会社 様】
工程ごとの仕掛り在庫を「見える化」 発注や生産計画の精度が向上
- 業種
- 金属製品製造業
- 従業員規模
- 490名(2019年6月)
- 導入前の課題
- ベテランの勘コツ頼りの生産管理体制の見直し
- 導入後の結果
- よりきめ細やかな生産管理へ 鋳造部門への発注や生産計画の精度が向上
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ベテランの勘コツ頼りの生産管理体制の見直し
取締役本社企画部長 藤原芳夫氏
アサゴエ工業株式会社は、建設機械をダイナミックに動かす油圧部品や、重要保安部品である自動車用ブレーキ部品などの分野で、鋳造・機械加工のトップブランドとして成長を続けている企業だ。特に大型パワーショベル用の動力ポンプ、制御用バルブ、油圧モーターなどの油圧部品に強く、これらの建設機械向け部品が売上の75%、世界シェア25%を占めるメーカーである。 同社の製品は、そのままユーザーに届けられるのではなく、多くは油圧機器メーカーに納品される。そこでさらなる加工や組立を、そしてその後に建設機械メーカーに届けられ商品となる仕組みだ。 そんな同社の悩みが、生産管理のシステム化が遅々として進んでいなかったこと。 「恥ずかしい話ですが、ほんの10数年前まで、社内にある材料や仕掛品には現品票すら付いていなかったのです」(藤原氏)。材料手配から生産計画、工程管理、納期管理まで、各部のベテラン生産管理者の勘と経験に委ねられていたのである。 その担当者がいないと生産状況が誰もわからない。また、発注量や在庫が本当に適切であるかも定かでなかった。加えて、ベテラン社員たちの高齢化が進み、世代交代の時期が刻々と近づいていたのだ。 この状況を打破しようと動いたのが、藤原愼二社長の子息である藤原芳夫氏。現実を目の当たりにして「ベテラン生産管理者たちが退職したら、当社は倒産してしまうのではないか」と危機感を募らせた。
MRPエンジンやカスタマイズ性、データベースの自由性が魅力
2007年、社内の全ての品物に写真付きの現品票を貼ることから開始。そして、属人化した管理ではなく、誰にでもわかるよう「見える化」することを目標とした。2年かけて現品識別を可能にし、その情報をデータベース化した。 その後、精機部にTPiCS生産管理システムを導入し、工程別在庫のトレーサビリティを取る計画を立てたが、残念ながら立ち上げには至らず計画は頓挫。2009年頃から受注量が急激に増加したなどの影響で、社内唯一のシステム要員であった藤原氏が多忙をきわめるようになったためである。 そして、世界の建設機械の需要が一巡した2011年半ば、同社はTPiCSによる生産管理システムの構築に再着手。藤原氏のほか、鋳造部と精機部に1人ずつシステム要員を採用し、各工場の生産管理担当者を含めたプロジェクトチームを結成した。 正確な在庫把握が困難な鋳造部門は生産管理システム導入の対象外とし、在庫把握が可能な精機部から始めることにした。改めて導入システム検討を行ったが、MRPエンジンやカスタマイズ性、データベースの自由性など、やはりTPiCSが優れていると判断した。
よりきめ細やかな生産管理へ 鋳造部門への発注や生産計画の精度が向上
アサゴエ工業の加工部門(精機第1、第2工場)の生産管理システムがフル稼働している。ベテラン社員による勘コツの生産管理を改め、TPiCSを活用してから6年。工程ごとの仕掛り在庫や作業進捗が「見える化」され、鋳造部門や協力会社への発注が適切に行われるようになった。当初、不安のあった実績の入力精度も向上。「いまや当社のDNAにすっかり溶け込んだ感じがします」と取締役本社企画部長の藤原芳夫氏は話す。
プロジェクトチームが第1目標としたのは、精機部から鋳造部への発注を明確にすることだった。そこで、ハンディターミナル導入により、開始、終了、不良等をバーコード入力する仕組みをつくった。また、精機部の製品加工工程は3~4工程に分けられているが、これまで素材と加工完成品の2つしかマスタ登録されておらず、各工程の仕掛り在庫はベテラン担当者の頭の中にしかなかった。 そこでマスタを再作成し、A1、A2、A3と枝番を設け、品番で何工程の在庫かを把握できるようにした。枝番の管理により在庫を見える化し、加工指示を出しやすくしたのである。しかし大橋氏によると、慣れないうちは対応漏れや勘違いが多く、準備期間中は期待する効果が得られない状況だったという。 2012年7月にTPiCSによる生産管理システムを本稼働。しかし、翌年1月くらいまで現場のハンドリングとシステム処理がうまく機能せず、運用開始から半年かけての修正を行った。こうした苦労の甲斐あり、時の経過とともに実績精度は大きく向上。また、明確な発注を行うには、正確なリードタイムの設定などの管理が重要であること、そして無駄な在庫をつくらず、仕掛り在庫や進捗状況が正確に把握できれば、顧客に対しての納期回答も迅速に行えることなども社員間で共有できるようになった。 TPiCSが軌道に乗ると、鋳造部でも、精機部から毎月何tくらいの注文が入り、それに対して納期遅れがどのくらい発生しているかが把握でき、仕事に取り組む姿勢にも変化が現れたという。それらと併せて、調達加工先(加工外注)に支給する材料の相手先での在庫状況なども明確になった。「以前は調達加工先から催促され、急いで手配することもありましたが、そういうこともなくなりました」(大橋氏)。 次なる目標はIoTを活用して設備の稼働状況を見える化すること。現在の加工工程マスタには加工プログラムは含まれていないが、マスタ追加等、柔軟性のあるTPiCSの機能を生かしつつ、より一層の見える化と現場改善に取り組む方針である。
精機第1工場生産管理担当主任 大橋直治氏
TPiCS-X
変化する市場に対応するために、個別生産や繰返生産に特化した最新の生産管理システムです。製品の多様化に対応し、工場のスムーズな生産を実現します。
株式会社 ティーピクス研究所
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