ワークフローと回付の関係とは
業務の流れを可視化・効率化する「ワークフロー」は、多くの場面で書類の回付という手続きを含んでいます。ここでは、ワークフローと回付がどのように関係しているのかを解説します。
ワークフローとは
ワークフローとは、組織内で発生する業務手続きの一連の流れを意味します。例えば、稟議書の提出から上長による承認、最終的な決裁までの手続きなどが該当します。これらの流れは業務ごとにあらかじめ定められており、担当者の役割や順番も決まっていることが一般的です。
こうした業務の可視化・標準化・効率化を目的に設計されるのがワークフローです。ワークフローは図形や記号を用いたフローチャートとして表されることが多く、関係者の役割や進捗状況を視覚的に把握するのに役立ちます。
回付の役割と重要性
回付とは、文書や申請書などを組織内で関係者に順番にまわして確認・承認を得るプロセスのことです。例えば、ある部署で作成された稟議書が上長、部長、経理部などを経て、最終決裁者へ渡る一連の流れが「回付」です。
ワークフローのなかでも「回付」は中心的な位置を占め、誰が、どのタイミングで、どのように文書を扱うかがあらかじめ設計されていることが重要です。適切な回付の設計がなされていなければ、承認の滞留や意思決定の遅延、責任の所在不明などの問題が発生しやすくなります。
そのため、回付は単なる手続きではなく、業務全体のスピードや正確性、ガバナンスにも大きく関わる重要なプロセスといえます。
稟議や申請業務における回付の具体例
ワークフローは特に稟議や各種申請業務において活用されており、そこでは必ずといってよいほど回付が発生します。例えば以下のような業務では、決められた順序での回付が必要になります。
業務 | 説明 |
---|---|
購買・支払申請 | 物品やサービスの購入に伴う手続き |
経費精算関係 | 出張費、交際費などの精算 |
労務管理関係 | 残業申請、有給取得申請など |
営業活動関係 | 見積書の提出、契約締結の申請など |
人事関係 | 採用、異動などに伴う手続き |
製品開発・販売関係 | 開発投資、製品の価格決定などに要する手続き |
利用許可申請 | パソコンやソフトウェアなどの利用許可を得る手続き |
これらの申請における回付ルートが不明確であると、承認の遅延や抜け漏れが発生する恐れがあります。ワークフローシステムではこのような回付経路を事前に設定し、自動化・可視化することでミスや遅延を防止できます。

紙による回付業務の課題
現在では多くの企業がワークフローをコンピュータ上で運用しています。しかし、紙で運用している企業もまだ少なくありません。そのような管理体制にはどのような課題があるのでしょうか。
承認・決裁スピードの遅延
承認や決裁の速度において、紙による回付はコンピュータ上での運用に比べて大きく劣ります。例えば、申請書に押印する上長が出張などで不在の場合、その人が帰って来るまでワークフローが完全に停滞します。
また、上長とオフィスが離れている場合は申請書を郵送するだけでも数日かかるでしょう。手書きでの記入や修正も手間となり、書類整理にも時間を要します。
書類の盗難・紛失
紙の書類には、常に紛失のリスクが付きまといます。回付中に行方がわからなくなるケースもあれば、誤って捨ててしまうこともあるでしょう。さらに、盗まれて第三者の手に渡る可能性もあります。盗まれたのか紛失したのかを判断しにくいのも難点です。
また、データの改ざんや流出が起きた場合にも発見や原因の特定に時間がかかるでしょう。統一的な管理が難しいため、決定的な対策が立てにくいなどの点でも、安全性に課題があるといえます。
保管・郵送コストの発生
紙の書類にはさまざまなコストが発生します。印刷するだけでも用紙やインク、プリンターにお金がかかり、離れた場所へ書類を回付する際には郵送費が必要です。
また、決裁を終えた書類の保管も無料でできるわけではありません。ファイルやキャビネットだけでなく、土地にもコストが生じます。さらに、それらの手間にかかる人件費も考えると、見えないところでも大きなコストが発生しているといえるでしょう。
電子回付を実現する「ワークフローシステム」とは
ワークフローを電子的に管理する際には、ワークフローシステムが使われます。これは、ワークフローや回付の流れを効率化するためのITツールであり、「Workflow Management System(ワークフローマネジメントシステム)」とも呼ばれます。
基本的に電子上の申請フォームと、それをあらかじめ設定した流れに沿って回付する機能からなります。申請者がフォームを記入すると、設定されたルート通りに回付が進み、上長の承認もシステム上で完結します。
ワークフローシステムの詳細が気になる方は、以下の記事もぜひご覧ください。仕組みや機能、おすすめの製品情報をまとめています。
ワークフローシステム活用のメリット
ワークフローシステムにより業務がどのように変化するのでしょうか。システムを活用するメリットを4つ見ていきましょう。
業務を効率化できる
紙で運用するよりも、ワークフローの流れが格段に早くなります。手書きで記入する手間がなく、修正も簡単です。また、時間や場所を問わず手続きできるため、地理的に離れていても支障はありません。郵送や上長の帰社を待つ必要もなくなります。
「次は誰に回付すればよいのかわからない」といった理由による遅延も防げます。ワークフローシステムにあらかじめ流れを設定しておけば、利用者は次に書類を渡す相手を意識する必要がありません。さらに、書類が誰の承認待ちなのかといったワークフロー上の状況もリアルタイムで把握可能。これらの結果、申請から決裁までの時間を大幅に短縮でき、フットワークの軽い経営が実現します。
また、効率化されるのは申請から決裁までに限りません。紙の書類と異なり管理の手間がなく、探したい書類も検索ですぐに見つかります。ワークフローシステムを導入することで、関連業務のほぼすべての段階を円滑化できます。
ワークフローシステムの導入によって業務効率化を実現した具体的な事例は、こちらの記事で紹介しています。
内部統制を強化できる
ワークフローシステムでは、書類が誰の手元にあるのか一目で確認できます。遅延が発生した場合もすぐに可視化されるため、関係者が迅速に対応するようになるでしょう。
また、イレギュラーな対応を防止できるのも大きなメリットです。システム上では、あらかじめ設定されたフロー以外での承認はできず、個人の判断による手続きの変更は制限されます。やむを得ず変更したい場合でも、権限に基づいた正式な手続きが必要です。
さらに、万が一データの改ざんや流出などが発生した際も、誰がいつ何を行ったかを履歴から特定できます。同様の問題が再発しないよう、迅速な原因分析と対策が可能に。こうした見える化により、コンプライアンス強化にもつながります。
そのほかにも、自動的に書式を統一する機能など、適正な手続きを支援する多彩な機能が備わっています。ワークフローシステムが内部統制の強化にどう役立つのか、詳しくは以下の記事をご覧ください。
コストを削減できる
ワークフローシステムを導入すれば、ワークフローにおけるすべての作業が電子上で完結します。紙の書類を扱う場合のようなコストは発生しません。具体的には、用紙代やインク代、郵送費、FAX代、書類管理にかかる費用などを削減できます。
また、作業の手間が減ることで人件費も抑えられます。目に見えにくい部分でもコストをカットできるため、これらを総合すると削減効果は非常に大きいといえるでしょう。
なお、無料で利用できるワークフローシステムもあります。初期コストを抑えて導入したい方は、以下の記事もぜひご参考ください。
柔軟な働き方を提供できる
紙でワークフローを運用する場合、書類は関係者の手元に物理的に届かなければなりません。そのため、「本人がその場にいないため対応できない」といった事態がしばしば発生します。その結果、営業社員が経費精算のためだけにオフィスへ戻るなど、大きな無駄が生じることもあります。
ワークフローシステムを導入すれば、こうした課題を解消できます。電子上でワークフローが完結するため、関係者が出社する必要はありません。出張先や自宅など、場所を問わず申請・承認が可能になり、時間にも縛られない柔軟な働き方が実現します。
在宅勤務の効率を高める手段として、ワークフローシステムが果たす役割については、以下の記事で詳しく解説しています。
ワークフローシステムを導入し、柔軟な組織を構築しよう
ワークフローは単なる業務手続きの流れではなく、「誰が・いつ・どのように回付するか」を明確にした業務設計そのものです。
紙ベースでの回付業務には、承認遅延・書類紛失・管理コストなど多くの課題がありますが、ワークフローシステムを導入することで、電子化・自動化されたスムーズな回付が実現します。特に複雑な承認経路を持つ企業にとって、回付の見える化・滞留防止・履歴管理といったメリットは大きく、働き方改革や内部統制強化にもつながるでしょう。
まずは自社の回付業務を見直し、効率的なワークフロー構築に向けて一歩踏み出しましょう。
